4.two wash bowl two child

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4.two wash bowl two child

 本のページをめくる、ヴィジュアルが奇想を食らいついて排出物をかしこに散布している。頭の中で映写機を回すコトコトという心地のいいリズムと走るノイズは僕に残った意識の欠片で、坂本カケルであるためのノイズ。  はぁ。掌を開いて、思い切り握る。音楽も流さないのに頭と体が揺れる。空はあった。僕の空に物語が駆けていく。置いていかれないように、後を追え。タイピングで追え。僕は後ろにいる。  絵と攻撃的なアルファベットの擬音でストーリーの骨格ができ、拾い読める簡単な英単語で肉が付いていく。血管に血が通えば、僕の心臓を貸してあげる。さぁ、命を拍として刻もう。  トゥーウォッシュボウル。洗面器、ゴーグルの少年とバンダナマスクの少女、ブルー、レッド。青の洗面器と赤い洗面器、少年の目は時折ゴーグルを突き破る、少女は散らかったグラスの破片を集めてあげてる。  二人はサウナのような場所で汗をかいた、着衣のままで性的な心音は聞かれない。足下に洗面器、青い汗と赤い汗、ベリーホットスウェット。二人は均等に汗を混ぜて分け合った。  少年は旅に出かける。洗面器に時々顔を突っ込んで。  少女は旅に出る。洗面器にちょくちょく顔を浸して押し込んで。  少年は月へ到着する。クレーターでかくれんぼをしたら一人だったかくれんぼが月の子を呼んでかくれんぼらしくなる。  少女はシンデレラのお城に到着する。晴れやかな舞踏会に少女は洗面器とバンダナマスクで誰よりも美しい。  少年はシンデレラに恋をした。  少女は月の子に恋をした。  洗面器越しの睦言は少年と少女を引き裂いていった。フレンドシップブロークン。新しい恋は種のままだった恋を摘んでしまった。  少年はシンデレラに会いに、からっぽの洗面器を抱えて旅に出る。  少女は月の子に会いに、からの洗面器を頭にのっけて旅に出る。  月とシンデレラ城の真ん中で、二人はすれ違った。  少年の言葉と少女の言葉。  そしてラストのページ。青の洗面器に赤い液体が溜まり、赤い洗面器に青い液体が漲る。少年は踊り、少女は歌った。月の子は首を傾げ、シンデレラはガラスの靴をトンカチで砕く。フィン。めでたしめでたし。    
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