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「オリオン座流星群!!!」 バアンとホワイトボードを叩く音と共に、友人は興奮気味に叫んだ。 ホワイトボードには”オリオン座流星群”と書かれているが、興奮のあまり、字がミミズと化している。その下からオリオン座の絵とそれを象る星の名前を書き出したが、やはり興奮のあまり、字がミミズに生まれ変わっている。絵なんかはふにゃふにゃで、正にミミズそのものだ。 その様子を、俺はガムを噛みながら食傷気味に眺めていた。 「はい質問~」 「おお、一哉!何でも聞いてくれ!」 気だるげに手を挙げた俺を、奴はハイテンションで指差した。俺の冷たい視線が気にならないのだろうか。 「今回の流星群は確実に見られるのですか」 「NO!前にも言ったが、流星は自然が作り出すもので気まぐれなものだ!確実なんてない!」 「望遠鏡は買ったのですか」 「NO!今回もお前のを使わせて貰う!」 ────滅茶苦茶だ。 俺は目を細め、天を仰いだ。そりゃ、流星は自然が作り出すものだ。だが、少し調べれば今までよりはマシな観測が出来るのではなかろうか。少なくとも、毎回「全く見えなかった」という記録しか出ないなんて馬鹿な事は起こらないだろう。 それと、いつまでも俺の持っている望遠鏡に頼る態度が気に食わない。いい加減、自分のを買ってくれよ頼むから。 ……と、言ってやりたいのは山々だが、寸でのところで堪えた。奴はいつもいい加減な計画しか立てなかったし、俺の望遠鏡ばかり使った。それに対して、これまでも再三注意してきたつもりだが、未だに言う事を聞いてくれた試しがない。もうとっくに諦めているのだ。 「オリオン座流星群、楽しみだね!」 隣から聞こえた声に目をやると、クラスメイトの瀬倉が俺に向かって微笑んでいた。相変わらず能天気な女だ。 「……そだねー」 俺はかつてないくらい適当に返事をした。
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