屋上のチャネラさん

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「てか、UFO呼ぼうとしてるのはわかりましたけど、その歌と踊りはなんなんです? それで本当に宇宙人と交信できるんですか?」 「さあ、どうかなあ? 初めて試すからね。宇宙人もやっぱり流行りの歌とかの方がウケはいいんじゃないかと思ってね」  シラけた目を向け、嫌味を込めてわたしは尋ねてみるが、またも守田さんは惚けたことを平然とした顔でぬかしてくれる。 「ウケがいいって……」  その歌と踊りが効果あるって評判だとか、誰か本物のチャネラー(いるかどうかも疑問だが…)に教わったとかじゃないのか……そんな短絡的な理由をもとにした自己流の方法でほんとにUFOを呼べると思ってるなんて、なんとおめでたい人なのだろうか……。 「さ、チャネリングの続きをしないと……そうだ、菅里さんも一緒にどうだい? なかなか楽しいよ?」 「ご遠慮させていただきます」  わたしが呆れているのにも気づかず、能天気にもふざけたお誘いをしてくる守田さんにわたしは謹んでお断りの言葉を述べる。 「そう? そりゃ残念。一人より二人の方がUFO来てくれそうなのになあ……」 「わたしにはそのダンスでUFO呼べるとはとても思えません! …ていうか、そもそもUFOや宇宙人なんてほんとにいるんですか? 証拠映像の動画とか見ても、みんな作り物のインチキにしか思えないんですけど」  何を言われても堪えないというか、他人の目などまるで気にしないというか、遠回しな嫌味などどこ吹く風の守田さんに、わたしはますます苛立ちを募らせながらオカルトマニア達が嫌がるであろう意地悪な質問をあえて口にする。 「まあ、確かに最近の動画にはオカルトビジネスで作られた偽物が多いのも事実だね。でも、UFOも宇宙人も確かに実在するよ。見たまえ! この広い宇宙を! これだけ幾万幾億という星があるんだ。我々地球人以外にも知的生命体がいたっておかしくないじゃないか!」  だが、守田さんはやはりその質問にも動揺することなく、むしろわたしの意見に賛同すうかのようなことを言って、大仰に両腕を開きながら頭上に広がる夜空を仰ぐ。 「………………」  その動きにつられ、わたしも無意識に顔を上げて空を見上げた。
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