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「――カーモンベイベ~未確認! 隠していたペンタゴンがっ!」
いた!
すると、屋上に出た瞬間、あの変な歌詞の歌が夜風に乗って聞こえてくるとともに、どう見てもダンス向きじゃない体型で踊る守田さんのひょうきんな姿が視界の隅に飛び込んできた。
「スー……今日もご精が出ますねぇぇ~っ!」
少し冷たくなった夜の空気を大きく吸い込み、わたしは口元に両手を当てて思いっきり声を張り上げる。
「カーモンベイベ~未確認! 加速するとオレンジ色に~……ん? ああ、菅里さん、こんばんは」
今度は最初から大声だったので、チャネリングに熱中している守田さんも一発で気づいてこちらを振り返る。ただし、やはり片脚を上げた奇妙な格好でだ。
そんな守田さんを見ると、ついさっきまで暗く打ち沈んでいたわたしの心も徐々にその闇が晴れていくような気がした。
「どうしたの今夜は? この前の用事の続き?」
「いえ、それはもういいんです。あの……わたし、仕事ですごいミスしちゃって……それで、上司や同僚にも迷惑かけちゃって……」
事情も知らず、暢気に尋ねてくる守田さんにわたしは正直にここへ来た理由を語る。
なぜだろう? 彼には見栄を張って格好つけることなく、恥ずかしい自分の失敗も包み隠さず素直に話すことができる。
「ふーん。そうなんだ。ま、気にすることないよ。僕なんかミスしない日の方が少ないくらいだからね。おかげで最近じゃ、みんな僕に仕事回してくれなくなってきてるんだよねえ、ハハハハハ…」
だが、わたしの真剣な悩みの告白にも、守田さんは同情するでも慰めるでもなく、まるで大したことではないかのようにそう言って、あっけらかんと高笑いをしてみせる。
いや、それは笑い事じゃないように思うんだが……でも、そういう彼の態度を前にすると、自分の犯したミス
などほんと些末なことのように思えてきてしまう。
「それよりも、なかなかUFOが来てくれないことの方が僕にとっては重要な問題だね。こんなに毎日一生懸命呼んでるってのに、いったい何がいけないんだろう?」
「まだ一度も成功してないんですか?」
そして、仕事のことなどどうでもいいというような問題発言をする守田さんに、わたしも感化されてきたのか?ろくに気に留めることもなく話を合わせて尋ねる。
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