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この脅しは、私にとっては効果てきめんだった。以後、私は一度も、死んだ人は死後どうなるのといった問題に関する自分の意見や、サンタ・クラナに関することを口にすることはなくなった。『それ』は、決して話題にしてはいけないのだと知ったのだ。ただ、私は決して、サンタ・クラナを信じていない人は、死んでもサンタ・クラナに行けないと信じたわけではない。私はただ、「人は死ねば、その魂はサンタ・クラナに行く」という言い伝えに対して何か意義を申し立てると、ろくな目には合わないのだと悟っただけだった。
ただ、死後の世界に関する事や、サンタ・クラナに関する事への興味自体は、私は人一倍持っていた。私はその後、村の図書館に立ち寄り、サンタ・クラナに関する本を見つけては、借りていくようになっていた。
人は、死んだらどこへいくのか。
その答えを探して、私は図書館中の本を読み漁った。けれど、答えは出なかった。
図書館から家に帰る途中、夜空を見上げると、そこではやはり、サンタ・クラナが輝いていた。桃色や緑色、青色の光を身にまとい、柔らかく光り輝いていた。やはり綺麗だなと、私は心の中で呟いた。
私は決して、死者がサンタ・クラナに行くと信じていたわけでは無かった。しかし、顔を上げて、サンタ・クラナを見つめると、何やら温かいような、神秘的な気持ちになるのだった。
どうやらサンタ・クラナには、人を神秘的な気持ちにさせる何かがあるらしかった。パステルカラーのガラスの破片をくずくずにして閉じ込めたような、奇妙な、しかし美しい見た目をもつあの星は、決して生きているうちには手に入らないような、数百カラットもあるダイヤモンドにも似ていたし、小さいころ親戚からもらった、懐かしいおはじきの1つにも似ていた。なにより、サンタ・クラナは、決して手を伸ばしても届かないような、とても高いところにあった。決して届かないようなところにあるものに対しては、人は想像力を掻き立てられるらしかった。
――ここからサンタ・クラナまでは、どれくらいの道のりなんだろうか。
――いつか、サンタ・クラナに人類が辿り着く日は来るのだろうか。
――サンタ・クラナには何があるのだろうか。
疑問に思っても、答えは出なかった。私の心の中では、ただ疑問が膨れるばかりだった。空の高いところでは、サンタ・クラナが、月の光を受け、美しく輝いていた。
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