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それからさらに数年後、私にとっては大きな事件が起こった。父が死んでしまったのだ。私にサンタ・クラナをはじめとする様々なことを教え、私の事をいつも温かい目で見守っていてくれた父が逝ってしまった。
葬式は、台風がやってきた火曜日に行われた。白い装束をまとった女性が、父が無事にサンタ・クラナに旅立てるようにと称したダンスを踊っていた。そのダンスを踊っている様子を見て、涙を流すものも数人いた。私が今まで一度も会った事のない、父の知り合いだったのかも分からないような若い女性は、葬式会場で、手鏡を片手に化粧をなおしていた。
やがて、母が会場に現れた。母は、右手には原稿のメモ書きを、そして左手には、基礎道徳書を持っていた。
母は、深呼吸を一つした。そして例の台詞を口にした。
「悲しんではいません。私の旦那は、サンタ・クラナへと旅立ったのです」
私は何と言ったら良いものかが分からず、ただただ棺桶の中に入った、父の姿を思い出した。死んでいるというよりは、眠りに落ちて、そのまま目を覚まさなくなったという形容の方がしっくりくるほど、美しい顔をしていた。私は父が魂だけの存在となって、ゆっくりとサンタ・クラナへ吸い込まれていく様子を、私は一生懸命想像した。けれども、それはうまくいかず、私の頭の中には、生前の父の笑顔と、サンタ・クラナの姿が交互に浮かんでくるだけだった。
人が死んだらどうなるのか、私の疑問は膨れ上がる一方だった。けれど人が死んだらどうなるのか、それを口にするのはいけないことなのだと、私は子供時代に教わった。
だが私にも、ひとりだけ仲間がいた。サンタ・クラナについて研究する、研究員のアンジュだ。図書館でサンタ・クラナについて調べていた時、私たちは偶然出会った。
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