わたしは、わたしらしく

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 少し元気になってきた。  そういえば……と夢香はさきほどさらっと流してしまった花恋が言った言葉を思い返していた。 『過去に付き合った男性の人数は四人』  夢香はごくりと生唾を飲み込んだ。  目の前のこの綺麗な友達は、少なくとも四人の男を知っている(・・・・・)んだ。  そう一度意識してしまうと、夢香は花恋の顔をまともに見れなくなってしまっていた。  ――当たり前のことなんだけど、そういうことも、したことあるんだよね……。  夢香の性に対する知識と耐性は男子中学生レベルであったので、容易にそのような発想が浮かんできた。  夢香は気づかれないように、花恋が着ている栗色のリブニットセーターをちらりと見た。  正確には胸元、女性の平均を遥かに凌駕した双丘(そうきゅう)を一瞬の眼球移動により、目に焼き付けた。  あれは一体全体、どういう科学理論であそこまで膨張することを可能としたのであろうかと、夢香は自身の悲しいほどに平坦な地形と比較し、小首を傾げた。  かたやエベレスト、かたや石狩平野。不公平だ。  もっと不公平なのは、私の親友の胸を好き勝手にした男が四人もいるということだ。  夢香は顔も名前も知らない男たちに、謎の対抗心を燃やした。  その思考を花恋に読まれたのなら、「夢香さん、ちょっと気持ち悪いです」と侮蔑の視線を向けられること必至なのを、脳内をピンクに染めた夢香は考えることができなくなっていた。
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