1264人が本棚に入れています
本棚に追加
「家でお仕事するってこと?」
「そう、週二回、水曜日と金曜日は家で作業するんだ」
「へー。今時のサラリーマンってそんな働き方ができるんだね」
「いや、僕はフリーランスだから」
「フリーランス! なんかかっこいい! 強そう!」
フリーランスの意味を分かっているのかいないのか、夢香ははしゃいでいた。そんな彼女は放っておいて、龍明はベッドから起きて洗面所へ向かった。
顔を洗い歯を磨き終えた龍明は仕事をするため、ノートパソコンをちゃぶ台にのせ、電源をいれた。
夢香はすでに布団を畳んでいた。
「ねえ、私も洗面所使っていい? あと、シャワーも浴びたいんだけど」
「ああ、いいよ」
龍明は快く承諾した。
彼女は「ありがとう」と言い、自分のリュックサックを持って洗面所へ向かった。
洗面所に入ったことを確認すると、龍明は安堵の吐息をもらした。
ああ、これはシャワーを浴びてすっきりした状態になってから家に帰るのだな、と察したからだ。
一時はどうなることかと思ったが、おさな気なアラサー少女を一日だけ保護し、無事に家に帰す。
そのお礼は、夢香からの森のくまさんという名の呪詛であったが、それは甘んじて受け入れようではないか。
自分は完璧な立ち回りをしたのだ。そう確信した龍明は、鼻歌まじりに仕事を開始するのであった。
最初のコメントを投稿しよう!