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自宅マンションの最寄り駅である『海老名駅』でおりた龍明は、晩ご飯をどうしようか考えていた。
スーパー、飲食店はすでにどこも閉まっている。となれば選択肢は一つしかないと考え、二十四時間営業のコンビニへ向かった。
その少女に気づいたのは、コンビニに入店する寸前であった。
コンビニ前ごみ箱の横でしゃがみ込んでいる少女は、冬も近く肌寒い気温だというのに上着を羽織っておらず、薄手の白いシャツ一枚を着ているのみである。
下は紺のジーンズを履いており、恐らく少女のものであろう子供っぽいデザインのリュックサックを脇に置いている。
なにより目を引いたのは、綺麗な長い黒髪であった。だが、しゃがみ込んでいるため、その綺麗な髪は地面を擦ってしまっている。
膝を抱え、寒さに耐えているその姿は、ひどく不憫に思えた。その姿を何となしにぼんやりと見つめていると、虚空に視線を泳がせていた彼女が不意にこちらを向いた。
必然と、目が合う。
少女の目はくりっとした大きな目で、実に人懐っこそうな顔立ちをしていた。
少女はにこりと笑いかけたが、こんな時間に一人でいる未成年がまともなはずがないと思った龍明は、同情の念を胸に押しこめて、彼女からの笑顔を無視して店内に入った。
弁当棚にはほとんど商品は残っておらず、溜息をついた龍明はおにぎりを二つ、サラダと、カップ麺をカゴに放り込んで、会計を済ませた。
やる気のなさそうな店員の、ありがとうございましたの声を背に店を出る。
視界のはしに先ほどの少女がいるのを感じながらも、そちらには目を向けず、足早に帰路を急ごうとした。
その時――。
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