僕らは掌の上で踊る

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僕らは掌の上で踊る

この街には、いわゆる“都市伝説”がある。 『山奥に廃れた神社がある。そこの賽銭箱に五円玉を投げ入れて願いを心の中で呟けば、その願いを神様が叶えてくれる』 嘘みたいな話だ。いや、実際嘘だろう。今まで一度も信じたことはなかったし、周りも信じる人はほぼ0だった。 でも、僕はもう、それに縋るしかなかった。 「さっき(あきら)の彼女さんのお母様から電話が来て、彼女さんが、交通事故に遭ったって……!」 「……母さん!由紀(ゆき)が運ばれた病院に連れてって!!」 「――残念ですが、ここに搬送された時はもう……」 そんなこと、受け入れられるわけない。 “次”なんて考えられるわけない。 声が聞きたい。 顔が見たい。 「暇だね」って言いながら無駄話をしたい。 ――由紀に会いたい。 その一心で、僕はいろんな人に都市伝説の詳細を尋ねて、ついに昨日神社を見つけた。古びた賽銭箱に五円玉を投げ入れて、叶えてほしい願いを心の中で呟いた。 すべては、由紀にもう一度会うために。 朝日が射す通学路の途中で、なんとなく僕は立ち止まる。 「……会いたいなぁ」 そして、僕は空を見上げた。
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