2 落ちた夕日

2/5
前へ
/19ページ
次へ
中学時代。 小学生から一段落新しい世界に踏み出した私は、吹奏楽部に入部をした。 担当楽器はホルン。 初めは何の知識も無かったが金管楽器の中で優しく、柔らかく綺麗に響き渡るホルンの音色に気付いたことで毎日がより楽しくなったのは言うまでもない。 この頃には悩みの種である”お漏らし”の癖は取れていたのかどうか─、今記憶の中で私は復習をしている。 「二葉、今日は暑いね」 同じホルンを扱う同級生が私に話しかけてくる。 放課後、部活動の時間帯に決められた場所に椅子を置き暑さに耐えながら練習をし、外で走り続ける陸上部を眺めていたっけ。 「あ、一未(ひとみ)ちゃん」 そうだ、確か苗字は一未。名前みたいな苗字。 その日まだ彼女と私は仲良く練習をしていた。 「そろそろ休憩しようよ」 髪をかき上げながら明るく笑う彼女。 「うん、もう少しだけ」 目の前の課題をひとまず終わらせようと楽譜に目を向けながら唇を震わせる、私。 練習の成果とは凄いもので、入部したての頃はほとんど息も続かなかった自分の身体もこの頃にはそれなりの肺活量を得る事が出来ていた。 腹筋なんてものは無いに等しかった筈なのに、ホルンを吹き始めたことで前よりも確かに筋力が付いてきていたことも段々と分かるようになっていた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加