2 落ちた夕日

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「暑いね」 「陸上部、凄いなあ」 水筒の中身を身体に浸透させて、私達は外の風景を眺める。 もう日が沈み始めた夕方、他の楽器の音も交互に聞こえてきて、蝉も鳴いている。 夏だな。良い空気感だな。と中学生にして訳の分からない事を考えていた気がする。 「ねえ二葉」 「ん?」 「中学卒業しても、ホルンやる?」 「んー....どうだろうね」 本当なら”やるよ!勿論やるよ!”とか言ってここは友情を確かめ合う場面なのかもしれないけれど、当時から妙に現実的な思考を持っていた私にはそんないい加減な発言は出来なかった。 「あたしも」 けれど、一未ちゃんは髪を触りながら笑ってそう言った。 「意外だね。続けるのかと思ってた」 「先のコトなんて分かんないじゃん」 価値観の合う子だなと、思った記憶はある。 あれ?何だ、今の所は良い記憶しか思い出せないぞ。 お漏らしを克服した理由を探していた筈なのに、最早全く何の関係も無い”おもいでばなし”になるのでは? 「でも今は二葉とこうやってホルン吹いていたいよ」 「一未ちゃん、」 これも覚えてる。良い子だなって、感動したんだ。 夕日は淡く美しい色へと変化してきて、彼女の瞳はとても綺麗に輝いていて──。 では何故私はあんな言葉を不意に思い出したのだろうか、と記憶を更に遡ろうとしたその時。
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