プロローグ

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「やぁぁああっぁ」  掛け声と共に、木剣を振り下ろす。  少女の素直さを表したような真っ直ぐな剣線が、真向かいの少年の首元を襲う。  だが、皮膚に触れる寸前に木剣で受け止められ、少年は髪をかきしながら口を開いた。 「下手くそ」 「違ぁう、教え方が悪いんだもん」  陽光に照らされて、一切の汚れのない金色の髪が視界を染める。教会で語られる女神のように美しい髪と容姿を持つ少女であるが、少年から見れば、まだ子供同然であった。  そして、少女のドレスは土煙で汚れ、その上無理やり動かしたことで先ほどからビチビチと悲鳴を挙げている。  さすがに衣服が可哀想だと思い、俺は握る剣の力を緩める。ある程度手加減し、少女は後方に飛ばす。  ぼん。  鈍い音が響き、少女を飛ばした方向を見ると、額を木に激突させていた。  ちょっとやり過ぎたかなと苦笑しながら剣を鞘に終い、俺は真っ赤なオデコを作った少女に歩み寄る。  オデコを押さた少女は発端だと思われる少年に視線を向けた。 「手加減してよ。それとさっきのは何? 上部だけの団長さん」  世間ではめずらしい黒髪をムシャムシャと掻きながら、溜め息混じりに反応した。 「あのな、その上部だけの団長はやめてくれ。王女さんが言うと周囲の信用が無くなってしまうから」 「そのことなら大丈夫、団長さんを団長だと認識している人はほとんどいなし皆な上部だけなのを十分に理解している。そんなことはどうでもいいから、さっきの何」  気づかない振りをしていたが直接言われると案外心にくる。たった十五歳で部隊を指揮する重要な職務の団長に任命されたが、ほとんど副団長に丸投げ状態である。  なぜ俺になったかと言うと単純に魔剣を使う技術が周囲より優れていただけの話だ。  つまり俺は団長だけど指揮する力、部隊をまとめる力が欠落しているので、頭で考えずにできる仕事が抜擢された。  それが王女のお守りである。単純に考えれば王女の後ろで立っていればいいのだが、王城といっても安全ではない。  いくら兵士が優れていてもその兵士がスパイだと言う可能性も有り得るため、護身術の一貫として剣術が認められている。 「教えてやるから。その前に服装とオデコどうにかしろよ」 「ふゃぁぁぁぁあ」
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