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謎の悲鳴を叫びながら、今ごろになって気付いた痛みで瞳に涙を貯めている。
意外と痛かったらしい。
護衛である俺がその対象を傷つけてしまったので護衛失格だと思われるかもしれんが、これは訓練の怪我なので除外されると思いたい。
はぁー減給かもな。
このまま放置するのもいいが周囲の反応がどのように見るかわからない。手でちょいちょいと招いて真っ赤なオデコを消毒し、懐から包帯を取り出す。
巻いている途中ぴっくと反応するが、気にせずグルグルと巻き、俺は思ったことを口にした。
「王女さんはまだ九歳なんだから、あんな無茶な真正面突撃はやめろよな。それと剣術が嫌ならやめてもいいんだぞ」
別に剣術を習うことは必須ではないし、自己防衛のために覚えようとする者は限られている。大抵の貴族は兵士を信じきており、スパイがいる可能性をあまり考えていない。
そのおかげなのか兵士が気に入られて貴族の家柄に嫁いだ例が多数あり、兵士から見れば最高の機会である。
が、その分要求が細かいのでこれもまた一部の兵士に限られてくるので現実は甘くはなかった。
「やめないもん、アルフを倒すぐらいまで剣術を極めてめせる。それと……その王女というは辞めてくれる、こっちも堅苦しいのは嫌だし……その」
視線を反らしながら、伝えようとしている姿は九歳とは思えないくらい魅力的であった。
そうか、堅苦しかったのか。案外団長さんと呼ばれるのも新鮮でよかったんだけどな。
一年近くも護衛をしていたが気づけなかった。
俺の脳はどれほど鈍いのだと思いたくもないが分からなかったので仕方がない。
それと名前を普通に呼んだけど、ここは敢えて反応しないことにする。
理由は簡単で、機嫌を直すのが面倒だからだ。国を導く王族とはいえ、まだ小さくそこいらいるガキと同等だが、それなりの敬意が必要だ。
別に王女を軽く扱っているわけではない。
「そうだったのか、気づいてやれずにわりな。スザンヌ殿下」
「殿下も肩苦しい、スザンヌって呼んで」
「嫌さすがにそれは……わかったよ。スザンヌ」
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