第1章 七年後の街

2/3
前へ
/8ページ
次へ
 その頃はアルフが死んだと理解できず、ただ助けが呼べない状態に陥っているのだと自分に言い聞かせるので必死だった。  そう、いつもように苦笑しながらも、わがままに付き合ってくるアルフが約束を破るはずがないと信じていた。  だが、現実という真実は微かな望みですらも許されず、建物が崩壊するかのように希望を打ち砕いてくる。  爆発から数日たった日、捜索部隊が跡地から魔剣の破片と思われる物を発見したと報告した。  跡地なら残されていてもいいのだが、当時の魔剣には封印した魔獣の適合率が高いほど、壊れた時の代償が大きいと言われていた。  代償と言っても個人差があるため、明確に基準を呈示することはできないが、アルフが使っていた魔剣は当時の最高主力とされた。  そのため、魔剣が壊れるということはそのまま持ち主の死を表すとの同義だった。  久しぶりにアルフのことを思い出して、今日は気分が上がらなかった。  もう帰って来ないアルフを待ち続けるのはやめようと理解しても、割り切れずにいるのは毎晩お見合い話をお父様から聞かされているからだろう。  王位を継ぐ者としては不出来な者だと思う、だけど一人の女性として見て、スザンヌはアルフの傍にいたかった。  こんな自由が許されないと理解出来ても、もしアルフが居たらならどうにかしてくるのではと言う甘い希望を抱いてしまう。 「でも、朝練はしないと」  一旦、考えるのを止めると、自分の魔剣に手を添えた。  この魔剣はアルフが使用していた魔剣の破片を素材として新たに作られたものである。 性能面で言えば、まだ魔獣を封印していないので一般の刀よりちょっと固い程度であるが、それでも破格の力を持っていた。  一度砕けた魔剣には希に封印された魔獣の力が継承され、再利用可能の素材として古くから知られている。  スザンヌはアルフの魔剣の破片にも、何らかの力が宿っているのではと思い、お父さんに頼んで譲ってくれないかと申告した。  案の定、拒否されてしまったが、上手くお母さんが繕ってくれたおかげで、お父さんを渋々納得させると言う形で終わりを告げた。  だが婚約者を十八歳前までに見つけると言う条件付きである。  本当なら結婚していても可笑しくない年であるため、上手く言い訳を見つけて延長させて貰っていたが、これで無しになってしまった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加