レイヴン・エフェクト 7895

6/36
前へ
/36ページ
次へ
少年は中学1年生の夏に先輩を殴り、部活を退部した。 先輩によるチームメイトへの陰湿ないじめが原因だったが、彼は黙して語らなかった。 「気にくわなかったから」 と顧問にぶっきらぼうに釈明した。 何も期待していない親は、辞めた理由すら聞いて来なかった。 YouTubeで偶然見かけたロックバンドに憧れ、 自分も何かを表現したいと考えるまでに、そう時間はかからなかった。 だが、まだアルバイトができる年齢ではないし、家も裕福ではない。 少年は、ギターが欲しいという思春期の想いを心の奥底に仕舞い込んだ。 同級生達はクリスマスや誕生日以外でも、欲しいゲームソフトを買ってもらっている。 クラスでスマホを持っていないのも、 TDRへ行ったことがないのも、自分だけだと疎外感を受けていた。 少年は次第に荒れていったが、誰かとつるむことはなかった。 弱さを他人に見せることが怖かったからだ。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加