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少年は中学1年生の夏に先輩を殴り、部活を退部した。
先輩によるチームメイトへの陰湿ないじめが原因だったが、彼は黙して語らなかった。
「気にくわなかったから」
と顧問にぶっきらぼうに釈明した。
何も期待していない親は、辞めた理由すら聞いて来なかった。
YouTubeで偶然見かけたロックバンドに憧れ、
自分も何かを表現したいと考えるまでに、そう時間はかからなかった。
だが、まだアルバイトができる年齢ではないし、家も裕福ではない。
少年は、ギターが欲しいという思春期の想いを心の奥底に仕舞い込んだ。
同級生達はクリスマスや誕生日以外でも、欲しいゲームソフトを買ってもらっている。
クラスでスマホを持っていないのも、
TDRへ行ったことがないのも、自分だけだと疎外感を受けていた。
少年は次第に荒れていったが、誰かとつるむことはなかった。
弱さを他人に見せることが怖かったからだ。
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