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(一)
「このたびはご愁傷様でございます」
「恐れ入ります」
須藤也耶子は都内にあるセレモニーホールで、元高校教諭・鈴木源次郎の葬儀告別式に参列していた。だが、彼女は故人とは全く面識がなく、昨日まで名前すら知らなかった。それなのにわざわざ葬儀告別式に足を運ぶのは、これが彼女の仕事だからだ。
源次郎は工業高校で工業科目を教え、生活指導主任も務めた熱血タイプの教師だったと聞いている。既に定年退職してから一年が過ぎたが、遺族はどの程度の規模の葬儀にしようかと悩んだそうだ。
定年退職したとはいえ、学習ボランティアなどで源次郎は社会との繋がりがあった。それに、彼くらいの年齢だと友人や同級生、兄弟や従兄弟などの親族もまだ存命の場合が多い。その上、近所付き合いも濃厚な地域に住んでいる。そのため親族三十名、会葬者百名の一般葬儀プランを選んだらしい。
ただ、喪主である妻・靖子には別の思惑があったらしい。どちらかというと工業高校は素行の悪い生徒が多いというイメージが強く、長年生活指導主任を務めていた夫は生徒から恨まれていたかもしれないと思い込んでいる節があるという。
「在職中は何度も危険な目に遭っていました。特に荒れていた時期は卒業式なんか、それはもうひどい有様で……私は気が気じゃありませんでしたよ」
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