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まさか、こうして本当に忘れた頃にこの写真が出てくるとは思わなかったけど。
見付けたのはあの日の写真だった。もう何年も前のことだ。一面が雪景色で、それでもなお雪は降っていて、梅の花が咲き始めていた頃の写真だった。
そうして、やっぱり記憶より記録ではないと残らないかと思った。
「ちょっとこっち手伝ってー!」
玄関の方から恋人の声がした。結婚相手とも言う。
「はいはい!ちょっと待ってて、今行く」
立ちあがり写真に背を向けた。
「忘れないでね」
振り返ってみるけど、そこには散らばった梱包用の段ボールと、さっきの写真があるだけ。
「……写真が喋るわけ無いか」
そうして、僕は想い人の元へ向かう。
想い出すことはない。けれど。
「大丈夫。また、思い出す」
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