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また、思い出す
カシャリと手元のカメラで彼女を撮った。
撮られた彼女がこちらを向く。
「もしかして、撮った?」
そう問われていつも通りの軽口を叩くことにした。
「もしかしなくても撮った」
「そっか」
だけれど、彼女の返答は淡々としたものだった。
「あれ?いつもみたいに消してって言わないんだ?」
彼女は少し呆れ顔をする。
「言ってもどうせまた撮るんでしょ」
「なぜばれたし!?」
それで僕はいつものようにまた軽口を叩くのだけれど、やっぱり彼女は淡々としている。
「いつものことじゃん……」
ぼそりと彼女がそう言った。
淡々としているのにはいくつか訳がある。
彼女と僕の二人でしてきた写真部の活動が終わること。
それは僕が転校するからであること。
彼女と僕が恋人であったこと。
それは彼女との相談の結果、関係をやめることにしたこと。
「ねぇ」
僕と同じ様な雪景色を撮っていた彼女がふいにこちらを見る。側には梅の花が咲いていて、互いの間にある枝にも何輪かが咲いていた。
「何?」
答えながら僕は、カメラのファインダー越しに彼女を見て、またカメラのシャッターを押すのだけれど、彼女はもう気にもしてなかった。
「忘れないでね、今日のこと」
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