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その後は、和やかな夕食を四人で囲んだ。
永瀬は、いつものおっとりと穏やかな雰囲気で、自分の研究のことをわかりやすく簡単に説明したり、フィールドワークのときのいろいろなエピソードなんかを話して、場を盛り上げる。
両親も、昂平の子どもの頃のやんちゃな話をしたり、姉のところの双子のベビーの話をしたりして、本当に楽しい食事になった。
昂平は、両親の寛大さと全てを受け入れてくれる包容力が、とても誇らしかった。
今度帰省するときは、兄や遊佐とももっと和やかに過ごせるだろうか?
そんなふうに思う自分が、なんだか不思議だった。
食事を終え、就寝の挨拶をして、永瀬と昂平は二階に引き上げる。
部屋に入った途端、昂平は、ほんの何時間か前の出来事を思い出してしまう。
何事もなかったかのように整えられたベッドだけれども。
その上で、永瀬が自分に与えた熱い体温と、甘く激しい快楽。
愛しげに名前を囁かれるたび、何度も何度も小さな絶頂に似た痺れるような快感の波に溺れそうになって。
「昂平君?」
そっと肩を抱かれ、昂平は思わずビクッと身体を震わせた。
永瀬は、少し困ったような顔をした。
「僕、布団で寝ようか…?」
ごめんね、怖がらせるようなことをしちゃったね。
「違っ……」
昂平は、離れようとする永瀬の部屋着の裾を掴んだ。
「怖がってなんか、ないし」
赤くなっているであろう頬を隠すように俯く。
「あんたの体温がないと、寝れなくした責任、ちゃんと取れよ」
永瀬は、更に困ったような顔をしていた。
昂平は俯いていたので、その顔を見ることはなかったけれども。
「昂平君て……実は結構天然なの?」
「はあ?ナニソレ、天然とか、あんたに言われたくない!」
思わず、顔を上げて反発すると、永瀬の唇がふわりとおでこに降ってきた。
「じゃあ、そんな可愛いこと、言わないでくれる?」
僕、さすがにご両親のいるところで、君を鳴かせるようなことは控えたいんだから。
ぎゅうっと抱きしめられ、耳許にそんな甘やかなことを囁かれて。
昂平は、頭が沸騰して返す言葉が出てこない。
ただひたすら、その胸に頬を押しつけて、真っ赤になっている顔を見られないようにするのが精一杯だった。
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