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新幹線に乗り込むと、永瀬は楽しそうに駅で買い込んだお弁当を取り出す。 「え?もう食べんのかよ?」 まだお昼には早すぎるし、新幹線は発車すらしていない。 「だって昂平君と旅行なんて楽しすぎるから」 返事になってない返事をおっとりと言って、手はいそいそとお弁当を開いていく。 「昂平君も、ほら、早く食べよ?」 自分の分だけでなく昂平のお弁当も開けてくれるから、まだお腹空いてない、と文句を言いつつ、昂平も箸を割った。 永瀬はなんて挨拶するのだろう? 帰省が決まってからずっと聞けないでいる疑問が、頭の中をぐるぐる回っている。 これでは、遊佐をなんて紹介するか、ずっと悩んでいた年末の兄と全く同じじゃないか。 「昂平君、ついてる」 永瀬の声に、はっと現実に引き戻されると。 その長い綺麗な指が口許を撫でた。 口についていたご飯粒を掬って、ぱくりと自分の口に入れる。 「ん、美味し」 そして、昂平君のお弁当も美味しそうだよね~なんて、呑気にほわわんと笑っている。 「僕のも食べてみる?」 首を傾げて、そんなこと言われたら。 なんか、まるで。 ちょっと卑猥な想像をしてしまった自分が、なんだかものすごく恥ずかしい。 「俺もうお腹いっぱいだから、これも食べていいから」 羞恥を悟られたくなくて、お弁当を永瀬のほうに押しやる。 永瀬と一緒に暮らし始めて、なんだかとても気持ちが落ち着かない。 一緒にいないとさみしくてさみしくてたまらないくせに、一緒にいるとそのひとの仕草の一つ一つにビクビクしてしまう。 身体を繋げることが怖いのか、それとも。 もしかして、期待…しているのだろうか。 ただ一緒にいるだけで、それだけで幸せだと思っていたのに。
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