4人が本棚に入れています
本棚に追加
バス停を降りると声を掛ける人がいた。
「すみません。失礼ですが、写真家の方ですか?」
不意に声を掛けられたことで菜月は身を強張らせてしまった。
いつも人見知りで、父にも心配させていた性格が出たのだ。
「ごめんなさい、バスの中から写真を撮っているのが見えたので」
優しそうなその女性は菜月より10歳ぐらい年上だろうか? 柔らかな笑顔で話しかけてくる。
菜月は緊張を解くと、女性に向かって答えた。
「はい。天然記念物を専門にしているこれでもプロなんです」
一眼レフのカメラを掲げるように見せた。
プロと言うには駆け出し過ぎるが、心の中ではプロのつもりなのだから間違いではない。
最初のコメントを投稿しよう!