天然記念物を映す写真家~菜月の物語~

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バス停を降りると声を掛ける人がいた。 「すみません。失礼ですが、写真家の方ですか?」  不意に声を掛けられたことで菜月は身を強張らせてしまった。  いつも人見知りで、父にも心配させていた性格が出たのだ。 「ごめんなさい、バスの中から写真を撮っているのが見えたので」  優しそうなその女性は菜月より10歳ぐらい年上だろうか? 柔らかな笑顔で話しかけてくる。  菜月は緊張を解くと、女性に向かって答えた。 「はい。天然記念物を専門にしているこれでもプロなんです」  一眼レフのカメラを掲げるように見せた。  プロと言うには駆け出し過ぎるが、心の中ではプロのつもりなのだから間違いではない。
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