天然記念物を映す写真家~菜月の物語~

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「天然記念物ですか?確かに穂高連峰にはそういうの多そうですけど。鳥か何かですか?」 「いえ、オコジョなんですよ。今回撮りたいのは」 「オコジョですか?穂高に居るんですか?」  驚いたような表情で女性は聞いてきた。  菜月は大きく頷いて写真を取り出した。 「これが3年前の冬に穂高で撮られたオコジョです。かわいいでしょ」  女性は写真を手に取ると表情がほころんだ。 「私、これが撮りたくて登山の訓練もして来たんです。本物が見たくて」  オコジョが白い冬毛の時期は限られている。厳冬期でしか見れない。 「これはあなたが撮られた物じゃないんですか?」 「いいえ、違います。2年前の夏に亡くなった父が撮った物なんです」
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