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「雨降るとか母ちゃんいってなかったじゃん!?」
学校を出た直後はピーカンに晴れていた空が、今は打って変わって雨模様。
傘なんてもっていない俺達は雨の直撃をうけずぶ濡れだ。
雨宿りのために駆け込んだ公園のトンネル型遊具の中で俺は愚痴を零す。
濡れた制服が身体に張り付き、気持ちが悪いったらありゃしない。
激しく音を立てる雨に負けないぐらいの大声で、俺は隣でしゃがんでいる庸平に話しかけた。
庸平は鞄を頭に乗せ、少しでも濡れないようにしていたが全く意味をなしていなかったようで
髪の毛から雨粒がしたたり落ちている。
「母親のせいにするなよ。たく、タオルとか持ってねえって。」
庸平は濡れた眼鏡を外すと、制服の裾で眼鏡を拭き始めた。
制服もびしょぬれなため、あまり意味がないようだが。
俺は何か拭くものを、とリュックサックを漁るが毎朝もらって山盛りになっているポケットティッシュは、リュックサックも濡れているせいで水が染み渡り使い物にならなくなっていた。
「逝ってしまったか……ポケットティッシュ達よ……」
「なんでわざわざ毎回律儀にもらうんだよ。あんだけもらったら邪魔だろ。」
「配ってる人に悪いなあって思うんだよな。差し出されたティッシュを無視していけるほど俺は冷酷な人間になれない。」
「スルーしてる俺が悪い言い方はよせ。」
そんな軽口を叩きあってる間も、雨は激しさをましていく。
すぐにはやみそうもない雨に、俺達は途方に暮れていた。
俺はシャツの裾に手をかけると、肌に張り付くシャツを脱いだ。
ズボンも脱ぎたいところだがここで脱いでしまうとさすがに猥褻陳列罪で逮捕されてしまう。
庸平は俺をちらりと横目で見ると、すぐに視線をそらした。
「庸平も脱げば?気持ち悪いだろ。」
「外で裸になる趣味はないんでね。」
「俺もねえよ。」
いつまでも上半身裸でいるわけにはいかないので、水で湿ったシャツを雑巾のように
絞ってみる。
すると滝のように水が流れ落ちてきた。
「みろよ庸平、めっちゃ水でてくる。」
「それがどうした。」
庸平は俺のほうを一切振り返らず、外を眺めている。
空が黒い雨雲に覆われ、日暮れのように暗くなっていた。
外が濃い雨によって閉ざされ、世界に俺達しかいないような錯覚を覚える。
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