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「雨、やみそうにもねえなあ。なあ康平。」
返事を期待したわけではないが、声をかき消す勢いで落ちてくる雨のせいで俺のつぶやきは庸平には聞こえなかったらしく、康平は何も返事をしなかった。
康平と俺の間に、気まずい沈黙が流れる。
俺達はよく二人きりだった。
――――――庸平は高校に上がってから、人付き合いを極端に避けるようになっていた。
もとから社交的なやつじゃなかったからあまり目立たなかったけども、俺はそれが気に食わなくていつも無理やり絡んでいっていた。
今日だって、一人で帰ろうとするあいつをひっ捕まえて、無理やり一緒に下校していたのだ。
なにか会話のきっかけにならないかと、俺は上半身裸のまま庸平の隣に座り、庸平の視線の先を追う。
そこには一冊の雑誌が地面に捨ててあった。
それを庸平はずっと眺めていたらしい。
「なにみてんの?」
俺がそう尋ねると庸平は俺のほうをやっと見た。
雨に濡れたせいで、いつも長い前髪によって隠れている目がさらに見えなくなっていた。
前髪で隠れた、レンズ越しの目を俺に向けて庸平は話し出す。
「あれなんだと思う?」
「質問を質問で返すなと習わなかったようだな!!!」
「……真面目に答えろよ。」
庸平はイライラとした口調でそう呟くとそっぽを向き押し黙った。
機嫌を損ねてしまったようで、俺は少し焦る。
庸平とは長い付き合いだが、こいつの怒りスイッチがわからない。
ガキのころは庸平の考えていることなんてすぐにわかったのに。
なんでわからないのか、わからなくなっていた。
「あ、えーとうーんと………………………………………………………………エロ本じゃね?」
考えあぐねたすえにでてきたのが下ネタだった時点でダメな気がした。
庸平はシモ関係のネタを異様に嫌がる傾向にある。
一度ズリネタについて聞いてみたら絶対零度の眼差しで見られた。
なぜそんなに嫌がるのか、については女にもてるからでは?と俺は推測していた。
庸平は眼鏡イケメン男子として学校では女子の間で人気がある。
陰気で口数少ないのもクールでかっこいいと評判だ。物は言いようだな。
そんな女子のアタックを受けて辟易しているのでは?というのが俺の見解だ。
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