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「あれ、俺が捨てたっていったらどうする?」
庸平は俺の回答をスルーするとまた俺に問いを投げかける。
雨はまだやまず、雨音が大きく耳を打つ。
質問の意図がわからず、俺は困惑する。
「……お前が捨てたのかよ。ちゃんとゴミ箱に捨てろよな。」
「いや、そうじゃねえよ。たらればの話。」
例えばさ、と庸平は続ける。その横顔は俺に何かを伝えようとしていた。
何を伝えようとしているのか、俺には見当もつかなかったけれども。
俺は庸平の例え話に耳を傾けた。
「あれがエロ本だったとするじゃん。」
「えまじでエロ本なの?」
「例えばの話っていってんだろ。まああれがエロ本だとして、どんなエロ本だと思う?」
「いや普通におっぱいのでかいねーちゃんの本だろ。ちなみに俺はGぐらいがいいかなあ。」
庸平はふんと鼻をならした。
俺を馬鹿にしたような態度にイラっとくるが、我慢して庸平の答えを待つ。
「実はあれ女の子のエロ本じゃないんだよね。」
「どういう意味だよ。」
あれほどうるさかった雨音が、一瞬にして不気味に途絶えた。
湿ったような沈黙が遊具内に広がる。
それはわずかな時間だった。
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