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第1章 出逢い
あれはかれこれ13年程前、小学2年生頃。
―――
「なぁ、みなとー。今日がっこー終わってひまー?」
午前中の授業合間の短い休み時間。ツンツン、と後ろから指でつつかれて振り返る。
机に突っ伏した腕に顎を乗せて見上げてくる眠たそうな表情。
(こいつさっきまでの授業絶対寝てたな…)
ぶらぶらと揺らしてくるそいつの足が時折、コンコンとこちらの椅子の足にぶつかってくるのはいつものことだった。
「一応やる宿題終わってるし、ひまだけど。明日はかいじゅうゲームするんだろ?」
「おー、もう終わってんのか?さすがだな!明日はかいじゅうゲームするけどさ、今日ちょっとした“たんけん”に行かね?」
ニカッと笑って見せる健斗の如何にもワクワクした表情にこちらも釣られて気分が高揚するようだ。
顔だけ健斗に向けていた姿勢を正すように、ぐるりと体ごと向き直す。
「なに、“たんけん”?どこに行くんだ?」
「これから夏休みじゃん?自由研究に虫なんかもいっぱいつかまえれそうだしさ。ちょっとした秘密基地みたいな公園があるみたいでさ」
「へー、面白そうじゃん。行ってみよっかな」
「よっしゃ!決まりだな!たかあきにも声かけとくからさ、そのつもりでいろよな」
「わかった、じゃあ終わったら下駄箱に集合にしよ」
さっきまで眠たそうに瞼が半分開いたような状態だった健斗が、目と目の間にしわが寄るほどにくしゃり、と笑う。
『バーンッ』と口パクをして拳銃を打つような仕草をしたかと思ったら、楽し気に鼻歌を歌いながらまた腕に顔を伏せてしまった。
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