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そうこうしながら信号手前で左に曲がった後、時折脇道の草花に寄り添うカマキリを捕まえてみたり、用水路のメダカやサワガニと戯れてみたりしながらしばらく進んだ頃、目の前に大きな階段が現れた。
それはどこか小さな丘の上にでも登っていくような広い幅と、しゃがんで上を見上げてみたところで先の様子が一目には分からない程の段差が続いている階段である。
「うわー、すっげぇでかい階段だなぁ!どこまであんだよ」
「げ、これのぼんの~!?けっこーな体力だぜ~?」
「ここまで来たんだし、行くしかないだろ。早くのぼろ」
3人共、ごくりと唾を飲み込む。
ひと息置いた後誰からともなく、よしと声をあげて階段の段差に足をかけ始めた。
一段一段と石で組まれているようで随分、オレや健斗や隆明はもちろん、下手すればオレ達の祖父母も軽く産まれる前からここにある程の年季の入った階段に見える。
「わ!」
不意に頬を柔らかい草が掠める。
単調に階段に上るのに飽きてきたであろうニカッと笑う隆明の手にはエノコログサがあった。
「おい、くすぐったいだろ」
「へへ、やり~!おれんちのミィコさ、このねこじゃらし大好きなんだよ~。いっぱい生えてるし持って帰ってやろっかな~うりゃうりゃ」
「だからってオレでためすな」
「んないっぱい今から持ってったらこれから秘密基地なのに大変だぞー。競争しよーぜ!コレ登りきるまでしょーぶな!よーいドン!」
「あ~!ずりぃぞ!けんと待てコノヤロ~!」
突然のかけ声と同時に隣を駆け抜けていく健斗。
それに追いかけていく隆明にため息を吐きながら付いて走り出した。
階段で追っかけっこなんかよくやるよ、ほんと。
「着いたぜ!」
「くっそ~!けんと足はえーんだもん!ずりぃや!」
「はぁ、お前らダッシュしすぎ!やっと追いついた」
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