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紅の葉
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ひらり。
紅色の葉が、覗き込むカメラの画面に舞い落ちる。
小さな公園の中、小さな境内社の脇にある階段へ座り、葉が落ちてきた大きな樹を見上げる。
紅と緑の隙間から透ける陽の光。
つかんでみたくて伸ばした掌が空を切った。
かざした掌の形は、まるで舞い落ちてきた紅色の葉にも似ている。
不意に脳内へよぎった自らの掌の横に並ぶ、小さな掌の影。
そういえばいつの日だったか、この透かした掌の光景をだれかと見た気がする。
しかしそれが誰のものだったか、頭を捻っても思い出せない。
どれだけ記憶を遡っても、どれだけこれまで記録してきた写真をめくってみても思い出せない。
それでも、ここに足を運ぶ。
何を目的に来ているか。
何をするために来ているのか。
それとも、誰かに会うためなのか―
さらり、
不意にそよいだ風が、頬を撫でた気がした。
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