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はらりと雪の舞う寒空の下。
彼女は相変わらずカメラを構えていた。
B「何を撮っているんだい?」
僕がそう聞くと彼女はいつもこう答える。
A「カメラが見ている景色よ。私たちの目に映るのとは違う世界。」
彼女はいつも少し不思議なことを言う。
B「今は何が映っているんだい?」
A「雪の精たちが静かな朝を喜んでいる姿ね。そしてふかふかの絨毯が早く人が来ないかなって楽しみにしているの。私も早く飛び込みたいけど、子供たちが先。もうすぐ子犬たちと駆けてくるわ。」
カメラ越しの世界も紙に映し出された世界も、僕には肉眼で見た世界と同じに見えた。
けれど、僕は彼女が嘘をついてるなんて思ったことは無いし、むしろそんな彼女の話が大好きだ。
カメラの見ているモノを伝えてくれる。
そんな彼女を僕はひっそりと「カメラの巫女」と呼んでいる。
A「何を笑っているの?」
無意識に顔が緩んでいたらしい。
B「何でもないよ。そうだ、子供たちは来たのかい?」
僕は少し誤魔化すようにそんなことを言って、カメラを覗き込んだ。
A「ええ、ほら。楽しそうに遊んでいるわ。あ、他の子たちも来たようね。」
彼女の指差す先にはまだ誰もいなくて。
やっぱり僕には見えないや、とそっと心で呟いた。
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