前言

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「はぁ~……」 二階の窓の外は一面の雪景色。吐いた息が白く染まる。 「どうした、溜息なんかついて」 友達の村田が長い足で歩いて来て横に立つ。冬休みが明けたばかりの一月の放課後、教室にいるのが僕と村田だけなのを確かめてから呟いた。 「(あづま)…彼氏いるみたいなんだよね」 僕の片思いの相手、同じクラスの東(さき)はちょっとした有名人だ。 幼い頃からカメラの扱いに長けた写真家志望で、撮った写真が雑誌に載るのも一度や二度ではないという。 「彼氏ぃ?写真一筋で既に仕事が恋人って感じじゃん」 「けどさぁ…最近、急激に可愛くなっただろ?」 「それはあるな」 うなづく村田に、不安が増す。 カメラの腕に加え、見た目が可愛いという事でも彼女は有名なのだ。 白い肌に滑らかな黒髪、銀縁眼鏡越しの大きな目。 籍を置く写真部では撮る側だけでなく撮られる側としても活躍している。 「機材にお金がかかるから」とそういうのを全くしなかったのに、ここの所、瞼にラメやグラデーションが施されていたり、やたらと長くなった睫毛が全て上を向いていたりする。急な変化だ。
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