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足音に気付いた東がカメラから顔を上げる。
雪の積もった桜の枝を撮っていたらしい。まだ開かない蕾も細い枝も寒々とした印象しか受けないが、どんな風景も東が写せば息吹が感じられそうな程に生き生きするのを知っている。
「どしたの、そんなに慌てて」
作風に反し、表情の変化も口数も乏しい東だが冷たい印象より愛らしさの方が勝る。元々白い肌にパウダーっぽいものがのせられ、今日もマスカラが塗られていた。近々眼鏡からコンタクトに変えるとも言っていたっけ。
寒空の下部活動中の東に、勇気を出して手短に聞く。
「最近、急に可愛くなったっていうか…彼氏でもできた、とか?」
東は数秒目を瞠ってから答えた。
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