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「あれは…思った事を言っただけで。僕以外にも色んな人から『すごい』って言われてるだろ?」
「うん。でも大抵『雑誌とかに載っててすごいね~』とかで、作品そのものについてあんなに言ってくれたのは榊だけだったよ。
『この光の表情がいいね』とか、『この角度が面白い』とか。もっと仲良くなりたくて、メイクとかアクセとか、分かりやすく頑張ってみたのに全然気付いてくれないから、もう言っちゃうね」
「な、何を?」
うわずった声で情けなく返してしまう。
「好き。榊も同じ気持ちだったりしない?」
強気な言葉とは裏腹に笑みが強張り、大きな目が潤む。未だ胸の前でカメラを構えたままの手が、細かく震えているのに気付いた。
ああ、前言撤回。大撤回。急激にそうなったんじゃない。東はその存在を知ってからずっと、こんなにも可愛い。
僕は返事を紡ぐべく、弛んだ唇を一旦噛んだ。
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