2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
冬、雪の積もった日。 休日だというのに、先輩から呼び出しがあった。 『十一時に学校に集合。遅刻厳禁!』 相変わらず簡潔な文章だと思う。 先輩と僕は写真部の部員である。 と言っても二人しかいないのだけれど。 前年に、先輩一人で活動していたところに僕が入った形。 写真に、さして興味は無かったのだけれど、ふらふらしているところを捕まった。 こう書くと、不本意なように聞こえるかもしれないが、なかなかどうして、その居心地を僕は気に入っている。 待ち合わせ場所に着くと、先輩は既に撮影を始めていた。 小柄で華奢な外見に似つかわない、ごつい一眼レフ。 吐く息は白い。 「見慣れた風景だけど、いつもと全然違って見えるんだ。すごいよね」 すっかり集中してしまっていた。 しばらくは、この調子だ。 やれやれと思う。 その時、ある事に気付いた。 先輩が今いる場所の上にある樹の枝が、積もった雪の重みで曲がっていた。 その歪みは徐々に大きくなっていて、このままでは――。 「先輩っ!!」 「え!?」 気付いた時には、先輩を抱きかかえるようにして、雪に倒れ込んでいた。 背後でどさっと大きな音がした。 間一髪間に合ったみたいだ。 「…大丈夫ですか?」 「…うん。わー、びっくりしたー……」 目をぱちぱちさせながら、なんだか可笑しそうに先輩は笑っていた。 「笑ってる場合ですか…」 「えー、だって……。怖かったけど何かおかしくって」 寒いからなのか、それとも恥ずかしさか、先輩は頬を赤く染めながらそう言った。 それを見て僕も笑っていた。 同じ気分だったのだ。 まっさらな新雪が、きらきらと輝くのが見える。 そうして僕は、もう少しの間、このままでいたいと思ったのだ。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!