女のいない店

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女のいない店

三科はそのファミレスに入った瞬間、店内が暗い気がした。 清潔だし、照明は明るい。店員も笑顔で愛想がいい。なのになぜ、そんな気持ちになったのか、最初は見当がつかなかった。 しかし、オフィスの近くにあるため、何度か昼食に利用したが、いつも同じ印象を持った。 その理由に気づいたのは、通い始めて二ヶ月ほどしてからだ。 「いらっしゃいませ」 可愛らしい声に出迎えられて、顔をあげると、茶髪のショートヘアの女の子が立っていた。女性店員だ。 ああ、そうか。女の子だ。この店には今まで女性店員が一人もいなかったんだと、遅ればせながらに思った。 (やっぱり、女の人がいると、ふんいきが明るいなぁ) 嬉しくなって、ハンバーグ定食をオーダーした。 それにしても、この時間、いつもは満席なのに、今日はえらく、すいている。 しばらくして、女性店員が注文の品をテーブルに運んできた。 ゆげのたつ、うまそうなハンバーグ。 だが、それをナイフで割ると、なかから黒いものが出てきた。大量の虫だと思い、「うわッ」と声をあげた。 黒いミミズのようなものが、ウジャウジャ、とびだしてくる。     
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