女のいない店

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よく見ると、それは髪の毛だった。一本や二本じゃない。長い髪の毛が無数に入りこんでいる。 ハンバーグだけじゃない。ライスにも米の一粒ずつに真っ黒な髪が生き物のように、からみついている。 三科は吐き気をおぼえて、トイレにかけこんだ。 (最悪だ。不衛生なんてもんじゃない) これは、あまりにもヒドイ。 ひとこと文句を言ってやらなければ……。 そう思い、席に帰ると、どうしたことか、あたりまえのハンバーグがあるだけだった。髪の毛なんて一本も見えない。 幻覚でも見たのだろうか? でも、もう食欲は失せたので、そのまま会社に帰った。 社内には同じ部署の先輩がいた。愛妻弁当をひろげている。 「田中さん。聞いてくださいよ。そこのファミレスで、ひどいめにあいました。絶対、見間違いなんかじゃなかったと思うんですけどね」 田中は面倒見がいいので、なんでも話せる。 顔を見て、ついグチってしまった。 すると、田中は顔をしかめた。食事中にする話題ではなかったと思い、三科はあやまった。 「すいません。気持ち悪かったですよね」 「いや、そうじゃないんだ。そうか。あそこ、また、つぶれるな」 「またって、どういうことですか?」 「うん」 田中は神妙な顔つきで話してくれた。     
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