女のいない店

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「このへんでは有名だよ。女を雇うとつぶれるテナントだって言ってね。あそこは前から何軒もいろんな店が入るんだが、みんな、つぶれるんだ。女の店員を雇うと、とたんに評判が落ちてさ」 「ふうん。そうなんですか」 相づちを打ちながら、なにげなく、田中の手元を見て、三科はギョッとした。 田中の手の内の弁当。ひじきの混ぜご飯だと思っていたものは、白飯に髪の毛がからんだものだった。おかずの黒ごまも、数ミリの長さの無数の髪の毛だ。 「……あそこに何年か前にあった店の店長が、バイトの女の子と浮気してね。奥さんと別れてくれって、包丁を持った女の子に追いかけまわされたんだ。女の子はその場で自殺したって話だねぇ」 田中は青い顔で力なく笑う。 そう言えば、聞いたことがある。 田中は以前、小さな店の経営者だった。だが、女性問題を起こして閉店せざるを得なくなったのだと……。 「まだ続いてるんだねぇ」 言いながら、田中はムシャムシャと弁当を食う。
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