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第3話
「...あ、あぁ、そうなん、か」
そう言って差し出されたスマホには「2012年8月26日」と表示されていた。
......日付はそのまんまなんか。
ってことは俺の14歳の誕生日のときか。
「ええって、そんなアピールせんでも」
そう言って笑う寿々歌。
そういや、こいつはいっつもこんな風に笑ってた。
このヘラヘラした笑顔みてると、何かがあってもどーでもいい気がしてきて......
「......なぁ、寿々歌。俺、もう頑張られへんかも」
ポロッと思いがけず本音を言ってしまう。
寿々歌はスマホから顔をあげて、大きな目をさらに大きく見開いて俺を見た。
「え...?なんで?」
「もう、頑張られへんねん、俺」
「ーーーーそんなこと言わんとってよ!!」
「え...?」
「崚行、めっちゃ頑張ってるやん!今も昔からもずーっと!!歌やってダンスやって演技やって、誰よりも努力して上手くなって......」
そこまで言って言葉につまって俯いてしまった寿々歌。
...泣いてる?
「...すず、か?」
「......そんなすぐに頑張られへんとか言ったらあかん!これまで頑張ってきた崚行自身が報われへんやろ!?」
そういって本格的に泣き始めてしまった寿々歌。
俺を抱きしめて、しゃくり上げながら泣いている。
「......ごめん、ごめんな......ちょっと魔が差しただけやって」
「......えぇ?」
すると涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げて、俺を見つめた寿々歌。
ーーーーこいつはなんなんやろう。
他人のことにこれだけ泣いて、真剣になって。
そんな寿々歌がどうしようもなく可愛くて、愛おしくて。
今度は俺が寿々歌を抱きしめた。
つづく、
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