第3話

1/1
前へ
/5ページ
次へ

第3話

「...あ、あぁ、そうなん、か」 そう言って差し出されたスマホには「2012年8月26日」と表示されていた。 ......日付はそのまんまなんか。 ってことは俺の14歳の誕生日のときか。 「ええって、そんなアピールせんでも」 そう言って笑う寿々歌。 そういや、こいつはいっつもこんな風に笑ってた。 このヘラヘラした笑顔みてると、何かがあってもどーでもいい気がしてきて...... 「......なぁ、寿々歌。俺、もう頑張られへんかも」 ポロッと思いがけず本音を言ってしまう。 寿々歌はスマホから顔をあげて、大きな目をさらに大きく見開いて俺を見た。 「え...?なんで?」 「もう、頑張られへんねん、俺」 「ーーーーそんなこと言わんとってよ!!」 「え...?」 「崚行、めっちゃ頑張ってるやん!今も昔からもずーっと!!歌やってダンスやって演技やって、誰よりも努力して上手くなって......」 そこまで言って言葉につまって俯いてしまった寿々歌。 ...泣いてる? 「...すず、か?」 「......そんなすぐに頑張られへんとか言ったらあかん!これまで頑張ってきた崚行自身が報われへんやろ!?」 そういって本格的に泣き始めてしまった寿々歌。 俺を抱きしめて、しゃくり上げながら泣いている。 「......ごめん、ごめんな......ちょっと魔が差しただけやって」 「......えぇ?」 すると涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げて、俺を見つめた寿々歌。 ーーーーこいつはなんなんやろう。 他人のことにこれだけ泣いて、真剣になって。 そんな寿々歌がどうしようもなく可愛くて、愛おしくて。 今度は俺が寿々歌を抱きしめた。 つづく、
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加