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冷やし中華始めました
玄関のチャイムが鳴った。まあ訪ねて来る者などめったにいないから、運が良ければ実家からの宅配便、そうでなければ、何かの勧誘話に暫く付き合わされる羽目になるだろうと思いながら、ドアを開けた。
目の前には、猫耳を付けたメイド姿の若い女性が立っていた。そしてエプロンには大きく『冷やし中華始めました』と書いてあった。
「それにしても汚いアパートですね。あ、郵便です」
自分の聞き間違えでなければ、彼女は確かにそう言った。
「郵便? ですか?」
僕は恐る恐る確認した。
「はい、郵便です。期日指定の」
彼女は満面の笑みを浮かべながら答えた。
「期日指定の? 郵便?」
僕が再び尋ねると、彼女は一瞬面倒臭そうな顔をして「ちっ」と舌を打ったが、すぐに満面の笑みを浮かべて説明を始めた。
「はい、期日指定郵便です。今日、この場所に配達するように指定された郵便です。まあ12000年程前に」
「い、12000年前に!」
僕は思わず大声で叫んでしまった。
「ちょっと! 大声を出さないでくださいよぉ。ご近所に迷惑ですから」
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