カフェ・ヴァスティ

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 岡野さんが「そう思いません?」とでも言いたげにわたしを見る。  生返事をして、わたしは頭の隅でこっそり考える。確かに、アレルギー持ちの人間なら、自分が口にする物には気をつかうだろう。 「えっと……、うちのミックスジュースが原因でご友人に何かあったということなんでしょうか?」  岡野さんがばっと赤くなった。 「あ、いえっ、そうじゃないんです! すみません、そう聞こえますよね。すみません!」  すごい勢いで頭を下げられて、わたしは慌てて制した。 「何も無いならいいんです。そんなに謝らないでください」  それでもひとしきり謝って、岡野さんは火照った頬をぱたぱたと手で扇いだ。  訴訟が云々という話でなくてよかった。わたしはこっそり胸をなでおろし、しかし、と自問する。  ただ疑問に思っただけで、わざわざ店を訪ねてくるものだろうか。  遺品に挟まっていたレシート。注文していたのは当人が飲めないはずの品。そんな、少しミステリーじみた雰囲気が彼女にそんな行動を取らせたのだろうか。 「ご友人は何のアレルギーがあったのでしょうか」 「え? ですから果物の……」 「果物ぜんぶ、というわけではないんでしょう?」  初めて思い当ったような顔で岡野さんが「ああ」と声を漏らした。 「桃です。食べると舌がかゆくなるんだって言ってました」 「桃を使うのは夏場だけですから、それ以外の季節なら飲んでも平気ですよ。十二月ならバナナとリンゴがベースです。それ以外にも仕入れによって変わりますが、桃は入りません。ですから、ミックスジュースを注文していても不思議ではありませんよ」
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