カフェ・ヴァスティ

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 岡野さんの顔に納得の色が見えた。だが華奢な肩はいまだにこわばり、縮こまっている。恐縮や緊張というよりは、見せてはいけない何かを護っているような姿に見える。  アレルギーがどうこうなんて、ほんとうはどうでもいいのではないか、という気がして仕方がなかった。わたしになど話せない深い理由の果て、彼女はここに来たのではないか。レシート一枚を頼りに。  わたしの頭まで探偵じみた思考に侵されはじめているようだった。様々な事柄が連なり、ひとつの道となって、わたしに答を授けてくれている。  行き着いた先と彼女が知りたいこととは、何の関係も無いかもしれない。だが、無関係であっても、岡野さんの陰りをわずかでも押し流す一端になるのなら。  義務感にも似た思いで、「間違っていたら非常に失礼な話なのですが」と前置きし、わたしは一息吸うと、岡野さんに訊ねた。 「その遺品の本とは、ひょっとしてドイツの児童文学ではなかったですか」  岡野さんがあんぐりと口を開けた。その反応にわたしは確信を得て、さらに続けた。 「泥棒とふたりの子どものやり取りを描いたお話、ですよね。魔法使いなんかも出てきて」  岡野さんは目まで見開いた。
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