晩秋

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僕は目覚めると毎朝君のことを考える。 君が僕にくれたたくさんの日々の事を考える。 そうだよ。 君は僕に明日へ向かう勇気を毎日くれている。 ただそこに息をして、存在しているだけにしても。 人は何のために生きているのだろう。 ミオが言ったように、この美しい一瞬を楽しむためかもしれない。 でも僕は今思う。 人は誰かのために・・・ 誰かに勇気を与えるために 頑張って生きてゆくんじゃないだろうか。 ミオが僕にこうして、今でも与え続けてくれているように。 ありがとう、ミオ。 僕の為に生きていてくれてありがとう。 僕はミオの折れそうな細い手をそっととった。 ふたりの手の中で、ススキがゆらゆらと頷くように頭を振った。 僕は彼女の耳元でゆっくり話しかけた。 「ミオ。僕の特別は、ずっと、いつまでも、君だけだからね?」 ミオの目がまたしばたかれた。 そして微かに・・ ほんとうに微かに、僕の手がゆっくりと握り返されてきた。
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