人生という牢獄で最後に

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人生という牢獄で最後に

 十年ぐらい前だったと思う。その秋、私達は帯広の近くの大きな農場で、住み込みのアルバイトをしていた。男の子たちは郊外のあちこちにある大きな畑を巡って、一日長芋やカボチャの収穫をしていた。私達は晴れの日も雨の日も工場で、何種類もの収穫物を大きさや品質ごとに選別して、箱詰め、出荷する作業を手伝っていた。男子寮と女子寮は離れていて行き来も禁止されていたが、誰かが車を出してくれるというときは、私達は郊外のおでん屋や焼き鳥屋やファミレス、手近にある飲食店であればどこへでも行って、呑んだり騒いだりして昼間の疲れを癒した。 「ヨセミテ?」  私の隣でケイスケが、アラキさんという、三十歳くらいの男の人と話していた。 「エルキャピタン、登ったんですか? なんていうか、陥としたんですか?」  私にはまるで呪文だ。 「たいしたこと無いんだよ。最初の二回は失敗してる。三回目で、片道で三日かかった。自慢できることじゃない」 「いや、凄いっすよ、それ! 単独ですか」 「こだわりがあるわけじゃないけど、単独でできることは単独で狙うようにしてる」 「かーっ、マジかー!」     
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