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その人は言った。
「一緒に空を見上げよう!」
「空?」
「一緒に空を見上げようよ!」
「なんで空?」
「一緒に空を見上げよう!」
「だから、なんで空?」
「とにかく空を見上げようよ!」
「何をさせたいんだ?」
「とにかく空を、空を見上げよう!」
「だから、なんで空を見上げなくてはいけないんだ?」
「空…。見上げよう!」
「空、空、空って何が言いたいんだよ!」
「分かった?」
「何がだよ!!!」
「これが素直な気持ちがないってことだよ!」
「………………」
「別に抗うことが良くないというじゃない。疑問を持つことも大切だし、黙って従うことが許されない場合もある。けどね、気づいて!」
「素直な気持ちがないってことは人の言うことを聞かないことではなく、人の言葉が耳に入らないってこと。だけどそれが悪いとも言い切れなくて、素直なだけでも単なる素直さを求めるだけでも間違いで、素直な心は育むこと。素直な心を養うこと。そして、素直な心は人が人として育つ瞬間を待つこと。つまり素直さとはより単純な人間になることではなく、素直な心を素直に受け取ること。だから、人の言葉が信じられない。人の気持ちを理解出来ない。人の苦労を想像出来ない。これらの姿勢も素直さと言えば素直さなの。大切なのは何が素直さなのかというよりも、どうすることが素直になれてると言うことなのかということなの。だから、人の言葉に耳を貸せない時、人の話をまともに聞けない瞬間があったとしても、それは素直さがないことではなく、素直にはなれてはいないと言うことそのものなの」
「それってつまり簡単な言葉で言うと頑なと言うことであり、難しい言葉で言うと柔軟さが無く細やかな機微を理解していないと言うことなの。つまり、素直さとは素直な心があるというより、多様な考えや多様な在り方を受け止められるということであり、それらのことの多くが即ち、素直さがあるということなの」
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