2話 寮長就任(仮)

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「理解していただけたところで、とりあえずご飯にしよう。今日は客もいるからな。腕によりをかけた自信作だ。シオンも遠慮せず、冷めてしまう前にたんとお食べ」  フィアさんのその声を合図に、寮生である三人が目の前の料理を美味しそうに――食べることはなく、嫌々口にしていく。  先程まで難しい顔をしていたレフィ・ソルティアさんは、まるで過酷な修行に耐えるお坊さんのような険しい表情で。  無邪気な笑顔を浮かべていたミーア・マジナリーちゃんは、嫌いなピーマンを泣く泣く口に含む子供のような、泣きそうな表情で。  自信に溢れていそうな真っ直ぐな表情をしていたリエナ・ファイティ・ターニアさんは、一心不乱に、噛まずに飲み込むようなスピードで料理を流し込んでいく。  表情から美味しいものを食べているのではないことがはっきりとわかる。食べれないものではないようだが、そんなに酷いのだろうか?  見た目は、絵に描いたような普通の食卓だ。見たことのない食材を使用されてはいるが、外国の料理のように虫を使ったゲテモノの感じはないし、匂いが酷いということもない。一般家庭の味噌汁に、野菜炒め。そこに不思議はない。  それをこの人たちは、なんでこんな表情で食べているのだろうか。というか、作った本人はどうなのだろう――
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