幕間

2/4
227人が本棚に入れています
本棚に追加
/415ページ
 そこはまるで、闇夜に紛れ込ませるために作ったような城だった。  城壁の全面が黒で統一されており、ところどころにある窓から漏れる光がなければ、夜中にこの城を視認することは困難だろう。そんな城の中の、赤い絨毯が敷き詰められた長い廊下を、一人の男が早足で歩いていた。  その表情には明らかな怒りが見て取れ、たまにすれ違う召使いたちは八つ当たりを喰らわないようにするためか、勢いよく頭を下げてやり過ごす。  男は、一つの部屋の前に止まると、ノックをすることもせずその扉を開けた。 「貴様、いつもノックをしろと言っておるだろう。着替え中だったらどうするのだ。ラッキースケベ狙いなのか?」  部屋は、まるで書斎のような場所だった。長方形の部屋を囲むように背の高い本棚が配置されており、そこには分厚い本がいくつも並べられている。  ランタンが一つだけ灯された部屋。照らせているのはランタンの周りの僅かだけで、部屋全体を照らせていないため、とても暗い。その中にいたのであろう、かろうじて視認できる長い髪と黒いドレス。声から女性ということはわかるが全貌は見えない。  女は、入ってきた男に向かってそう言った。     
/415ページ

最初のコメントを投稿しよう!