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 昨夜よりはずっとラフな、けれど同じく単色の、パンツとカットソー。モノトーンに近い配色のそれはスタイリッシュというよりも無難であるのに、ここが教会というだけで清々しい印象が勝っている。 「…………BBCのアナウンサーかとも思ったんだけど」 「はは、ありがとうございます。母がイギリス人なもので」  お世辞とも嫌味とも取れる言葉に鷹揚に笑う彼は、単純計算で半分イギリス人だ。光りの加減によってかなり明るくなる茶色い髪、薄い色の目の摂がクウォーターで、黒髪に黒い目の彼がハーフなのが、なんとなく不公平ではないか。身長差があるので少し顎を上げて、彼を見る。 「お父さん似なの?」  ぶしつけな摂を、彼は怒らなかった。 「そう見えます?」  苦笑がちに笑って、反対にそう訊いてくる。ほら、と唆すような茶目っぽい目つきは記憶に新しく、それに思い至れば確かに、ゆったりと体重を感じさせる体格とか、癖っ毛の黒髪とか、それに声――アーメンと唱えればきっと、牧師とすり替わっていたって判らないだろう。 「ああ、そっか、息子だ!そっくり」 「今日のオルガニストはたぶん、母だったはず」 「そっか」 「そう」  大した意味のない相槌はどこか間抜けていて、 「そっか……変な感じ」  んふふ、失笑してしまう。 「変な感じ。英語喋ってたあんた、俺の頭ん中ではもっとクールだったのに」  そう言うと、彼もつられたように笑う。     
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