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「参ったな。どうするのがいいか、測りかねてる…………ああ、失礼じゃなければ、お名前を伺っても?」 「もうちょっと簡単に訊いてくれれば答える」 「はは。名前、教えて?」 「ふたみ。二見、摂」 「Seth?」  セス、突然呼ばれて、戸惑って彼を見上げる。 「ああうん、ほんとはね、Seth。じいちゃんはそう呼ぶけど……」  続けて言われたことは、摂をさらに戸惑わせるのにじゅうぶんだった。 「アダムの三番目の息子だ、Seth」 「……そうなんだ」 「そう、なんだ」  まるきり同じ台詞でも、イントネーションを変えれば問いにも答えにもなる。  摂は礼服の胸ポケットを手探り、名刺ケースから一枚を取り出して彼に手渡した。会社名から数行空けて、「第一営業部 二見 摂」、下方に小さなフォントで、ビルの所在地、電話番号、FAX番号、e-mailアドレスが書かれた、営業用のそっけない紙切れ。 「俺は知っているよ、のあ」  名刺の文字を追っていた目線がそこから離れ、摂に戻る。 「聞こえてたの」 「そりゃあ、大声で呼ばれてたもの」  あの時の彼らもきっと酔っ払いだったのだろう。「のあ」は意外そうに眉を寄せて、空中を睨んだ。     
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