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途中までの、大型ショッピングモールへの流れから外れてしまえば、あとは爽快なドライブになる。道を憶えるのは得意だし、海沿いの道路から見ても、高台の教会自体が目印になっているから便利だ。その教会へ続く長い上り坂を、後続車もいないので気分に合わせてのろのろと上り、敷地に入る。結婚式の時に使った広い木陰のスペースには他に何台か車が停められていたので、並ぶように停めてエンジンを切った。寄り道をしても一時間程度の所要時間。なかなか理想的だ。
ジャリ、ジャリ、歩く度に鳴る砂利に、なんとなく忍び足になってしまう。
開け放たれた礼拝堂の中は、遠目にもたくさんの人で溢れていた。ジャスト・オン・タイムで礼拝の真っ最中。心境としては、開始時間に遅れて教室に入れない学生の、ばつの悪さに似ている。
数段の石段を登り、扉に半身を隠すようにして中を覗く。
「入って」
思いもよらず背後から声をかけられて、心臓が一度、大きく跳ねる。けれどこの落ちついたトーンには、摂を安堵させる効果のほうがより多く含まれていた。
ゆっくり振り返った先には、ノア。摂をこの場所でエスコートできる唯一の人物に、目線と首の角度で問う――いいの?
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