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「職場ではたいてい、コンタクト。休みの日は面倒なので」
「バスケ歴は?」
「小、中、高で十二年」
「ポジションはもちろん?」
「シューティング・ガード」
「俺も中学までやってたよ、ポイント・ガード。経験者だとさ、顧問とかやらされない?」
「ご明察。副顧問ですけど、ちゃんとコーチがいるから……」
言葉を切ったノアが、ふふっ、耐えきれないといった様子で肩を振るわせ、俯き、また肩を振るわせる。
「ねえ、このペースで質問は続くんだろうか」
くぐもった笑いはギブアップの合図で、摂はそれに唇を尖らせて反論した。
「だって。うまくできないんだ……知りたいこと訊くためのプロセスが、うまく踏めない」
「うん、難しいよね」
「そうなの、難しいの、俺には。あんたは、俺に質問はないの? 何でも訊いてよ」
不貞腐れた摂の声に、機嫌を損ねたのだと理解したノアが、宥めるように片手を挙げる。
「……じゃあ、ひとつ」
「ひとつ。興味ないんだ」
「そんなことない。俺をノアと呼んでくれる?」
――そう、コミュニケーションのために最も重要なことの一つは、呼称だ。ノアの手のひらに、手の甲で軽くタッチして、摂は笑った。
「せつ、ってゆったら、いいよ」
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